ねこローグ

ねこローグとはねこのダイアローグの略です。飼いねこの椛(もみじ)のことや自分自身やどんな方をも大切にできる良質なダイアローグ(対話)を記します。

依存症回復への応援 刑罰からつながりへ

   依存症からの回復への応援。「だめ!!ぜったい」と厚生労働省覚せい剤など違法薬物についての啓発活動をしています。

 

 しかし、「だめ!!ぜったい」では、むしろ薬物依存や薬物依存への入口にある方々を守ることが出来ません。むしろ、孤立を深め、薬物へつながることを強化するだけだと思います。

 

 薬物依存の方々やその入り口にある方々は、孤立している方々が多いです。例えばつながりがあるのは、覚せい剤の売人だけなど。やめることができない、つらいと正直にいえない環境にあるのです。

 

 むしろ、「(薬物を)使いたい」と正直に言えるつながり作り、環境が大切ではないかと思います。

 

「だめ、ぜったい」の前は、厚生労働省の標語は「人間やめますか」というのもありました。

 

 覚せい剤使用者=人間ではないというメッセージは果たして有効でしょうか。

 

 「だめ、ぜったい」や「人間やめますか」という言葉を聞くと、覚せい剤使用者やその家族や子どもはむしろ覚せい剤使用を隠そうとするのではないかと思います。

 

 隠すことを伝える言葉よりも回復の道があるよとの情報提供、メッセージのほうがよほど役に立つのではないかと思います。

 

 私自身も「人間ではない」というメッセージより無条件で「愛されている」というメッセージの方がいいです。

 

 依存症回復施設でサービス管理責任者として働いたこともありますが、依存症から回復しようとする利用者さんは、みな人間でした。ごく普通の当たり前の人間でした。

 

 あるときに、やせ細った野良猫が依存症回復者が集う施設に迷い込んできました。利用者さんは、親身に野良猫に名前をつけて、かわいがっていました。

 

 あるとき、スタッフが過って、野良猫を車でひいてしまいました。すると、野良猫をすぐに病院へ連れて行き、治療を受けさせ、引き取ってくださる方を探して、ひきとっていただきました。

 

 誰一人として、保健所につれていけ、処分してもらえなどといわれる方はいませんでした。

 

 彼らは、私と変わらない一人の人間として、野良猫の世話もしていました。実は、施設ではすでに保護した猫を飼っていたため、新たな野良猫を受け入れることができなかったのです。そこで、受け入れ先を探して、譲渡しました。

 

 むしろ、みていて、利用者さんの方々は、野良猫の世話に愛情を注いでいたようにも思います。様々な背景を持った利用者さんが集まっていましたが、捨てられた、丁寧に接してもらえなかった辛い経験、背景を持つ方も何人もおられたようでした。

 

 自分自身の辛かった境遇を野良猫に投影しているようにも感じました。依存症者、特に薬物を使う人間は人間ではないという風潮があるようにも感じるのですが、むしろ弱さの情報公開ができない1人の人間ではないのかと思いました。

 

 薬物の依存症者を罰する必要もあるのでしょうが、むしろ必要なのは治療ではないかと思います。薬物や薬物でつながる関係ではなく、安心して弱さや苦労を語れる関係のなかで生きていけるように支援することではないかと考えます。

 

 薬物の依存症者の方は刑務所に行っても、考えることは薬物を使いたい、(刑務所を)でたらすぐに薬物を使うという考えだけだったそうです。

 

 刑罰で薬物をやめることができるのなら、いくらでも罰すればよいですが、果たして有効なのかと思います。

 

 また、依存症者が集う施設とは別の施設で勤務していたときに、薬物の売人をしていて、捕まって刑務所にいったという方とも話しました。

 

 その方は、普通に仕事をしていたが怪我をして働けなくなり、売人になったといわれていました。しかし、怪我をして働けなくなったときに、生活ができなくなったときに、相談できる、支援をしていただける適切な方が周囲にいれば、売人にはならなくてもよかったのではと思いました。

 

 ですので、刑罰よりも適切なつながりの回復が必要ではないでしょうか。

 

 薬物だけでなくギャンブルやアルコール依存の方々もまた同様です。自分が正直に弱さも苦労も語れるような環境やつながり、安心できる環境が必要ではないでしょうか。

 

 しかし、そのような環境は依存症者だけに限ったものではないと思います。むしろ、今の日本全体に必要なものではないかとも思います。

 

  関西地方のある依存症者の施設設立を検討しているときに、地域住民から反対運動が起きているとニュースになっていました。

 

 依存症者がピュアな心を持っていて、危険性はないとはいいませんが、危険なのはいわゆる健常者も依存症者も変わらないのではと思います。

 

 よく引き合いに出されますが、精神疾患を持つ方が犯罪を犯すと、なぜか精神科通院歴をいわれます。それ以外にも精神保健福祉手帳を持っているなど。

 

 しかし、精神疾患の方の犯罪率は健常者よりはるかに低いという統計も出ています。異物は入ってもらいたくないという意識もあるのでしょうが、地域コミュニティの受け入れという面でも、つながりや安心ということも含めて大切にしていければと思います。

 

 2000字をこえましたので、 第17回目を終わります。